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【症状】本人以外にはわかりにくい「不定愁訴」
卵巣が生殖の使命を終えて月経がなくなることを閉経と言います。この閉経の前後が「更年期」です。通常、更年期は40代半ばから50代半ばくらいに起こりますが、個人差があります。この更年期に起きる女性特有の症状を「更年期障害」と呼びます。
更年期障害にはさまざまな症状がありますが、明らかな器質的疾患(内臓や神経、筋肉などの病理的・解剖学的な異常)が見られません。これを「不定愁訴」と言います。不定愁訴は本人以外にはわかりにくく、個人差も大きいのが特徴です。人によっては症状が重く、日常生活や仕事に支障を来す場合もあります。
更年期障害の主な症状
血管運動神経障害
熱感(ほてり・のぼせ)、動悸、頻脈、遅脈、高血圧、低血圧
精神神経障害
頭痛、頭重感、めまい、たちくらみ、不眠、耳鳴り、不安感、恐怖感、気力減退、集中力後退、抑うつ、記憶力低下など
運動器系障害
腰痛、肩こり、関節痛、座骨痛、筋肉痛など
知覚系障害
しびれ感、知覚鈍磨、知覚過敏、蟻走感など
泌尿生殖器系障害
頻尿、排尿痛、稀発月経、不正出血、膣の萎縮症状、性交障害など
皮膚分泌系障害
皮膚の衰え、発汗、口内乾燥、唾液分泌過多など
消化器系障害
はきけ、食欲不振、下痢、便秘など
【原因】ホルモン分泌の低下とストレスが原因
更年期になると、卵巣機能の低下により卵胞ホルモンの分泌が低下し、これが自律神経系にも影響を与えるため、さまざまな症状が現れます。
閉経や老化に対する不安、子どもの自立などによる家庭環境の変化、夫婦不和、体力の衰えの自覚といったストレスが加わると、更年期障害は症状がひどくなることがあります。
【考え方】「腎」の衰えが主な原因
女性の生理変化は、思春期・成熟期・更年期が、7の倍数で分けられます。更年期障害は、42歳~50歳代に起こる生理変化による不調を言います。その原因は、主に体内の水(水液)の運行をつかさどる臓である「腎」の衰えにあると考えられます。
腎は生長、発育、生殖などの働きをコントロールし、老化にも深く関与します。そして生命エネルギーの源となる物質であり、腎に貯えられる「腎精」は、ホルモンのような働きもします。この腎の働きが更年期になると衰え、腎精も減少していくため、身体にさまざまな障害が現れるのです。これは女性に限定されるものではなく、男性にも起こります。
また、更年期に多い生活環境の変化が「肝」や「脾」や「心」といった他の臓に失調を起こし、さまざまな症状が重なり合って現れたりもします。
【処方例】症状に応じて漢方薬を使い分け
一番強く症状が現れている臓を中心に、精を補う「補腎」(ほじん)や、肝気を良く巡らせる「疎肝」(そかん)、気を補う「補気」(ほき)、精神を安定させる「安神」(あんしん)などの作用のある漢方薬を使い分けます。