2026年4月の勉強会では、「桂枝」と「甘草」を含む漢方について、廿野延和先生より解説がありました。
漢方相談の現場でもよく使われる「桂枝(けいし)」と「甘草(かんぞう)」。
これらは多くの漢方薬に含まれる重要な生薬で、それぞれ異なる役割を持っています。
今回は、勉強会で学んだ内容をもとに、桂枝・甘草の特徴と、それらを含む代表的な漢方について解説します。
- 桂枝(けいし)
体を温めて、血流や気の巡りを改善する生薬です。また、経絡の流れを整える働きもあり、漢方では非常に重要な役割を担っています。
冷えによる不調や、気血の流れが滞っている状態の方によく用いられます。 - 甘草(かんぞう)
気(エネルギー)を補う働きがあり、体力低下や疲れやすさに用いられます。
また、ほんのりとした甘味があるため、漢方全体の味を調和させる役割もあります。
桂枝と甘草を含む代表的な漢方

ここで桂枝と甘草の含む代表的な漢方についていくつかご紹介いたします。
桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
不安感や動悸、のぼせ、耳鳴りなど、精神的な不安定さや自律神経の乱れに用いられる漢方です。
体を適度に温めながら、精神の高ぶりや不安定さを落ち着かせる働きがあり、特に以下のような症状に適しています。
※虚弱体質で、精神的な緊張や不安を感じやすい方によく用いられます。
- 動悸や不安感が強い
- 眠りが浅い・驚きやすい
- のぼせやすく、気が上に上がりやすい
- 神経過敏・緊張しやすい
【含まれる生薬】
桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、竜骨(りゅうこつ)、牡蠣(ぼれい)
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
めまいや立ちくらみ、ふらつき、動悸など、体内の水分バランスの乱れによって起こる症状に用いられる漢方です。
余分な水分を調整しながら、気の巡りを整えることで、バランスの崩れを改善します。特に以下のような症状に適しています。
※体内の水分が上半身に偏ることで起こる不調に用いられることが多いです。
- めまい、立ちくらみ、ふらつき
- 頭が重い、ぼーっとする
- 動悸(特にめまいを伴うもの)
- 乗り物酔い
【含まれる生薬】
茯苓(ぶくりょう)、桂枝(けいし)、白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)
小建中湯(しょうけんちゅうとう)
体力が低下している方や胃腸が弱い方の体質改善に用いられる、体を温めながらやさしく補う漢方です。
特に、腹部を温めて緊張をゆるめる働きがあり、以下のような症状に適しています。
※虚弱体質や小児に使われることが多いです。
- お腹が弱く、疲れやすい
- 冷えやすく、体力がない
- 腹痛やお腹の張り
- 小児の下痢・便秘、夜尿症、夜泣き
【含まれる生薬】
桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、膠飴(こうい) etc.
桂枝を含む漢方の特徴
桂枝を含む漢方の大きな特徴は、「体表を整えながら、気血の巡りを改善する」点にあります。
桂枝は単に体を温めるだけでなく、発汗や皮膚表面の調整を通して、外邪(風寒)への抵抗力を高める働きがあります。そのため、風邪の初期症状(悪寒・発熱・頭痛など)に使われる処方にも多く含まれています。
また、桂枝は気が上にのぼりすぎる状態(のぼせ・動悸・不安感など)を整える働きもあるため、自律神経の乱れや精神的不安を伴う症状にもよく用いられます。
同じ症状でも様々な漢方のアプローチが存在(同病異治)


同じ症状でも、さまざまな漢方のアプローチが存在します(同病異治)。
勉強会では、最近ご相談の多い症例について検討を行い、どのような漢方が適しているのか相談員同士で意見交換を行いました。
西洋医学では「病名」に対して治療を行うことが一般的ですが、漢方では「その人の状態(体質・生活環境・症状の程度など)」を重視します。
例えば、同じ「めまい」や「不安」といった症状であっても、体質や原因によって提案する漢方は異なります(同病異治)。
今回の勉強会では、一つの視点だけで判断するのではなく、多角的に状態を捉えることの重要性を改めて学ぶ機会となりました。
同病異治(どうびょういち)
同じ病気・同じ症状であっても、体質や原因が異なれば治療法(使う漢方)も変わるという考え方



