
「突然脇腹から下腹部にかけて激しい痛みが出た…」
「血尿が出て不安になった…」
「吐き気や冷や汗が止まらない…」
「尿が残る感じがして気になる…」
「何度も尿管結石を繰り返している…」
これらの症状に心当たりがある場合は、『尿管結石(にょうかんけっせき)』の可能性があります。
尿管結石は、腎臓でできた結石が尿の通り道である尿管に詰まり、激しい痛みや血尿などを引き起こす泌尿器系の疾患です。
一般的には、水分不足や食生活、生活習慣などが発症に関係すると考えられています。
また、一度発症すると再発しやすいことも特徴の一つであり、日頃の生活習慣を見直すことが再発予防につながるとされています。
本記事では、尿管結石の原因や症状、西洋医学の考え方に加え、東洋医学・漢方で考える「湿熱(しつねつ)」や「腎(じん)」との関係、再発予防につながる生活養生や食生活、漢方薬、生薬についてもわかりやすく解説します。
強い痛みや発熱などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。本記事では、西洋医学だけでなく東洋医学の考え方や、再発予防につながる生活のポイントについてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
尿管結石とは?原因や仕組みをわかりやすく解説
尿管結石とは、腎臓でできた結石が、尿を膀胱へ運ぶ通り道である「尿管(にょうかん)」に詰まる疾患です。
結石によって尿の流れが妨げられることで、腰背部(ようはいぶ:脇腹から背中にかけての部分)の激しい痛みや血尿などの症状が現れます。
ここでは、尿管結石の基本的な仕組みや尿路結石との違い、発症のメカニズムについてご紹介します。

尿管結石は、「尿路結石(にょうろけっせき)」の一種で腎臓から尿道まで続く尿の通り道(尿路)にできる結石の総称を指し、結石ができる場所により以下のような種類に分類されます。
- 腎結石(じんけっせき):腎臓の中に結石が留まっている状態
- 尿管結石(にょうかんけっせき):腎臓から落ちた結石が尿管に詰まった状態
- 膀胱結石(ぼうこうけっせき):膀胱に結石ができたり、膀胱に結石が落ちた状態
- 尿道結石(にょうどうけっせき):尿道に石が詰まった状態
尿管結石になる原因とは?
尿管結石は、水分不足や食生活の乱れをはじめ、生活習慣や体質など、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。
これらの要因によって尿が濃縮されると、カルシウムやシュウ酸、尿酸などが結晶化し、結石ができやすくなります。
ここでは、主な原因についてご紹介します。
原因①:水分不足

水分摂取量が減ると尿が濃縮され、カルシウムやシュウ酸・尿酸などの成分が溶けきれずに結晶化し、結石となります。
特に夏場など汗を多くかく時期は脱水になりやすく、注意が必要です。
日頃からこまめに水分を補給し、十分な尿量を保ち結晶ができにくい環境を作ることが大切です。
原因②:食生活の乱れ

結石の約90%は『シュウ酸カルシウム結石』です。
これは、尿の中でシュウ酸とカルシウムが結び付き、結晶化してできる結石です。
ほうれん草やタケノコ、チョコレート、コーヒー、紅茶などシュウ酸を多く含む食品の過剰摂取や、動物性たんぱく質・脂肪の摂り過ぎなどは、結石ができやすい環境につながると考えられています。
ただし、シュウ酸を含む食品を極端に避ける必要はなく、偏った食べ方や過剰摂取を控え、栄養バランスの良い食生活を心掛けることが大切です。
なお、結石ができにくい食事のポイントについては後ほど詳しくご紹介します。
原因③:生活習慣

近年では、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病との関連も指摘されています。
また、運動不足や睡眠不足、ストレスによる暴飲暴食など、生活習慣の乱れも結石ができやすい環境につながると考えられています。
原因④:体質・家族歴

尿に結石のもととなる成分が溶け出しやすい体質や、結晶化を抑える働きが弱い体質など、生まれ持った体質が関係する場合があります。
また、家族に尿管結石を経験した人がいる場合は、遺伝的な体質や生活習慣などの影響により、発症リスクが高くなると考えられています。
尿管結石になるメカニズム
尿管結石は、腎臓で形成された結石が尿の通り道を移動し、尿管に詰まることで起こります。
実は、小さな結石は日常的にできることがあり、その多くは尿と一緒に自然に体外へ排出されるため、自覚症状がないまま終わるケースも少なくありません。
しかし、結石が大きくなったり、尿管の細い部分に引っ掛かったりすると、尿の流れが妨げられ、尿管結石となります。
結石が尿の流れを妨げると、尿管は結石を押し流そうとして強く収縮します。また、尿が流れにくくなることで腎臓側の圧力が高まり、脂汗が出るほどの激しい痛みや血尿などの症状が現れます。
尿管結石が起こる主なメカニズムは以下の通りです。
水分摂取量が減って尿が濃くなると、カルシウムやシュウ酸、尿酸などの成分が尿に溶けきれなくなり、小さな結晶ができます。
腎臓でできた小さな結晶は、時間の経過とともに少しずつ結び付きながら大きくなり、結石へと成長します。
腎臓で形成された結石が膀胱へつながる細い尿管へ移動すると、尿管は結石を体外へ排出しようとして強く収縮します。
さらに、尿の流れが妨げられることで腎臓側に尿がたまり、腎臓内の圧力が急激に高まります。その結果、背中や脇腹に突然の激しい痛みが起こり、血尿を伴うこともあります。

このように、尿管結石は結石が大きくなったり、尿管に詰まったりすることで、激しい痛みや血尿などの症状を引き起こします。
そのため、結石を作りにくい生活習慣を心掛け、再発を予防することが重要です。東洋医学では、結石ができやすい体質にも着目して考えます。詳しくは後ほどご紹介します。
日本での尿管結石(尿路結石)の患者数は?

2015年に行われた全国疫学調査によると、尿路結石の患者数は「人口10万人あたり約138万人」で、「男性約192人」「約女性87人」であったことが明らかにされています。
近畿大学によると、1965年~2005年までの40年間で患者数は3倍に増加しており、年間で新たに尿路結石を発症する人は「約15万人」、一生のうちに発症する確率は「男性で7人に1人」「女性で15人に1人」であるという調査結果も出ています。
2015年に実施された全国疫学調査では、尿路結石は決して珍しい病気ではなく、多くの方が発症する疾患であることが報告されています。
また、近畿大学の報告では、1965年から2005年までの約40年間で患者数は約3倍に増加したとされ、年間約15万人が新たに発症しているといわれています。
一生のうちに尿路結石を経験する確率は、男性では約7人に1人、女性では約15人に1人と報告されており、特に男性に多い病気として知られています。
また、近畿大学の報告では、1965年から2005年までの約40年間で患者数は約3倍に増加したとされ、年間約15万人が新たに発症しているといわれています。一生のうちに尿路結石を経験する確率は、男性では約7人に1人、女性では約15人に1人と報告されており、特に男性に多い病気として知られています。
尿管結石と腎結石(じんけっせき)の違いと関連性
尿管結石と腎結石は、どちらも尿の通り道にできる「尿路結石」の一種ですが、結石がある場所や症状に違いがあります。
以下の表に、それぞれの特徴を簡単にまとめました。
| 項目 | 尿管結石 | 腎結石 |
| 結石がある場所 | 尿管 | 腎臓 |
| 主な症状 | 背中や脇腹の激しい痛み、血尿など | 多くは無症状 |
| 特徴 | 尿管に詰まることで強い痛みが起こる | 尿管へ移動すると尿管結石になることがある |
実際には、尿管結石の多くは腎臓でできた結石が尿管へ移動し、途中で詰まった状態を指します。
そのため、腎結石と尿管結石はまったく別の病気ではなく、同じ「尿路結石」の経過の中で起こる病態と考えられています。
腎結石の多くは腎臓に留まっている間は無症状ですが、尿管へ移動すると尿管結石となり、突然の激しい痛みや血尿などの症状を引き起こすことがあります。
尿管結石の症状
尿管結石は、腎臓で形成された結石が尿管に詰まることで、さまざまな症状が現れます。
最も代表的な症状は突然起こる激しい痛みですが、そのほかにも血尿や吐き気、排尿時の違和感などを伴うことがあります。症状の現れ方には個人差があり、結石の大きさや詰まる場所によって異なります。
主な症状は以下の通りです。
突然の激しい痛み

腰背部(ようはいぶ:背中から脇腹にかけての部分)や下腹部に突然激しい痛みが現れます。
尿管結石による痛みは、「世界三大激痛」と表現されることもあるほど強い痛みとして知られています。
※世界三大激痛:尿管結石、群発頭痛、心筋梗塞。
この組み合わせには諸説あり、痛風や三叉神経痛などが挙げられることもあります。
血尿

結石が尿管の粘膜を傷付けることで出血し、尿が赤くなったり、血液が混じったりすることがあります。
血尿は目で見て分かる場合もありますが、肉眼では確認できず、健康診断や尿検査で初めて見つかるケースもあります。
血尿が続く場合は、尿管結石以外の病気が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関で相談することが大切です。
吐き気・嘔吐

激しい痛みに伴って、自律神経が刺激され、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
痛みが強いほど症状も現れやすく、水分や食事を十分に摂れなくなることで脱水を招くこともあります。
吐き気や嘔吐が続く場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
排尿トラブル

結石が膀胱付近まで移動すると、残尿感や頻尿、尿が出にくいなどの排尿トラブルが現れることがあります。
また、排尿時に痛みや違和感を伴うこともあり、膀胱炎と似た症状が現れるケースもあります。
症状だけでは区別が難しいため、気になる場合は泌尿器科で検査を受けることが大切です。
発熱

発熱を伴う場合は、尿路感染症を併発し、「結石性腎盂腎炎(けっせきせいじんうじんえん)」を起こしている可能性があります。
結石によって尿の流れが妨げられた状態で感染が起こると、症状が急速に悪化することがあります。
高熱や悪寒を伴う場合は重症化するおそれもあるため、速やかに医療機関を受診してください。
結石性腎盂腎炎とは?
尿路にできた結石によって尿の流れが滞り、その部分で細菌が繁殖し、腎臓に感染が広がることで起こる疾患です。
39℃以上の高熱や激しい腰痛を伴うことが多く、重症化すると敗血症など命に関わる状態へ進行する可能性もあります。
強い痛みや発熱、血尿、尿が出にくいなどの症状がある場合は、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。
特に高熱を伴う場合は緊急性が高いこともあるため、早めの受診が重要です。
症状の程度は、結石の大きさや詰まる場所によって異なります。
尿管結石は誰にでも起こる可能性がありますが、食生活や生活習慣、体質によって発症しやすい方もいます。
次の章では、尿管結石・腎結石になりやすい人の特徴について詳しく解説します。
尿管結石・腎結石になりやすい人の特徴
尿管結石や腎結石は、突然起こる病気というイメージがありますが、実際には毎日の食生活や生活習慣、体質などが大きく関係しています。
特に水分不足や食生活の偏り、生活習慣病などは発症リスクを高めることが知られており、一度発症した方は再発しやすいことも特徴です。そのため、どのような人が尿管結石・腎結石になりやすいのかを知ることは、初めての発症予防だけでなく、再発予防にも役立ちます。
以下では、尿管結石・腎結石になりやすい方の特徴をご紹介します。
尿管結石・腎結石になりやすい人の特徴

- 肉類や脂っこい食事が多い
動物性たんぱく質や脂質の多い食事が続くと、尿中の尿酸やシュウ酸などが増え、結石ができやすい環境につながります。 - 塩分・糖分の摂り過ぎ
塩分の摂り過ぎは尿中へ排泄されるカルシウム量を増やし、糖分の過剰摂取も結石形成の一因と考えられています。 - シュウ酸を多く含む食品を偏って食べる
ほうれん草、タケノコ、ナッツ類、チョコレート、紅茶などはシュウ酸を多く含みます。ただし、これらの食品を避けるのではなく、カルシウムを含む食品と組み合わせて食べることが大切です。
- 水分摂取量が少ない
尿量が減ることで尿が濃縮され、結石の成分が結晶化しやすくなります。 - 汗をよくかく
夏場や運動などで大量に汗をかくと体内の水分が失われ、十分に補給しないと尿が濃くなりやすくなります。 - 生活習慣病
肥満、高血圧、脂質異常症など生活習慣病との関連も指摘されており、メタボリックシンドロームに該当する方は結石ができやすい傾向があります。 - 遺伝・家族歴
家族に尿路結石の既往がある場合は、体質的な要因が影響している可能性があります。
尿管結石になりやすいタイプ

- ビールなどアルコールを飲む機会が多い
- 揚げ物や脂っこい料理をよく食べる
- 焼肉や焼き鳥など肉中心の食生活
- ラーメンなど味の濃い食事が多い
- 野菜不足
- 水分摂取量が少ない
- 肥満、高血圧、脂質異常症がある
- 汗をかく機会が多い
男女差・年代

Sakamoto S, et al : Chronological changes in the epidemiological characteristics of upper urinary tract urolithiasis in Japan. Int J Urol 25 : 373, 2018.
男性は20〜40代に多く、女性は閉経後の50〜60代で増加する傾向があります。
このデータから、男性ホルモンは結石形成に関わる成分を増やすため男性ホルモンの多い年齢層に増加が見られ、女性ホルモンの低下が見られる閉経後の女性に増加傾向が見られることがわかります。
尿管結石は再発率が高い疾患であり、治療後5年間で約40〜50%が再発すると報告されています。
そのため、結石を取り除くだけでなく、毎日の生活習慣を見直し、再発しにくい環境を整えることが重要です。
西洋医学では食生活や水分摂取などの生活習慣改善が重視されます。一方、東洋医学では『なぜ結石ができやすい体質なのか』という体質にも着目します。生活習慣の改善と体質へのアプローチを組み合わせることが、再発予防を考えるうえで重要な視点となります。
次の章では、尿管結石の予防や再発防止につながる食生活について詳しくご紹介します。
尿管結石と食生活について
尿管結石は、毎日の食生活や生活習慣と深い関わりがあります。
特に水分不足や塩分・脂質の多い食事、動物性たんぱく質の過剰摂取は、結石ができやすい環境をつくる要因と考えられています。一方で、食事内容や食べ方を少し工夫するだけでも、結石の予防や再発予防につながることがあります。
ここでは、尿管結石の方や再発を予防したい方が、日常生活で意識したい食生活のポイントをご紹介します。
ビールなどのアルコールは水分補給にならない

「ビールを飲めば尿が出るから結石予防になる」と考えられることがありますが、アルコールは水分補給の代わりにはなりません。
アルコールには利尿作用があり、一時的に尿量は増えますが、その後は体内の水分が失われやすくなります。その結果、尿が濃縮され、結石の成分が結晶化しやすい状態になる可能性があります。
飲酒をする場合でも、水や麦茶などを一緒に飲み、水分不足にならないよう心掛けることが大切です。
水や麦茶などシュウ酸をほとんど含まない飲み物をこまめに飲む

尿管結石の予防では、十分な尿量を保つことが非常に重要です。
国内外のガイドラインでは、1日の尿量が約2L以上となるよう十分な水分を摂取することが推奨されています。必要な飲水量は季節や運動量、発汗量によって異なるため、一律に「2L飲めばよい」というわけではありません。
基本的には水を中心に、麦茶などシュウ酸をほとんど含まない飲み物をこまめに飲むことがおすすめです。
野菜をしっかり摂る

野菜に含まれる食物繊維やマグネシウムは、結石ができにくい環境づくりに役立つと考えられています。一方で、ほうれん草、タケノコ、ナッツ類などシュウ酸を多く含む食品もあります。
しかし、これらを極端に避ける必要はありません。
大切なのは「食べ合わせ」です。
乳製品、小魚、大豆製品などカルシウムを含む食品と一緒に食べることで、腸内でシュウ酸と結合し、便として排出されやすくなります。
脂っこい食事や味の濃い食事を控える

揚げ物や脂身の多い肉など動物性脂肪を多く含む食事は、腸内でシュウ酸の吸収を促進する可能性があります。また、塩分の摂り過ぎは尿中へ排泄されるカルシウム量を増やし、結石形成のリスクを高める要因となります。
ラーメンや加工食品、外食が続く方は、塩分量にも注意が必要です。
※注意※
カルシウム不足は、かえって尿管結石のリスクを高めることもありますので注意が必要です。
カルシウムは腸内でシュウ酸と結合し、便として排出する働きを助けます。
カルシウムが不足するとシュウ酸が多く吸収され、尿中へ排泄された際にカルシウムと結び付き、シュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。
そのため、カルシウムは極端に制限するのではなく、適量を毎日の食事から摂取することが重要です。
尿管結石は、日々の食生活を見直すことで再発リスクの軽減が期待できます。水分補給、塩分や脂質の摂り過ぎを避けること、カルシウムとシュウ酸のバランスを意識した食事など、小さな積み重ねが予防につながります。
しかし、生活習慣を改善していても、尿管結石を繰り返してしまう方も少なくありません。西洋医学では食生活や生活習慣の改善を重視しますが、東洋医学では「なぜ結石ができやすい体質なのか」という根本的な要因にも着目します。
次の章では、東洋医学・中医学からみた尿管結石の考え方や、「湿熱」や「腎」といった概念について詳しくご紹介します。
東洋医学・中医学・漢方の違いとは?

尿管結石は、西洋医学では画像検査や血液・尿検査などによって診断され、結石の大きさや位置に応じて治療方針が決められます。
一方、東洋医学では病名だけではなく、『なぜ結石ができやすい体質になったのか』という背景まで含めて考えることが特徴です。
その考え方を理解するためには、「東洋医学」「中医学」「漢方」の違いを知ることが大切です。これらは似た言葉として使われることが多いものの、それぞれ意味や役割が異なります。
東洋医学
東洋医学とは、古代中国医学を起源とし、日本の漢方医学や韓医学など、アジア各地域で独自に発展した伝統医学の総称です。人が本来持つ自然治癒力を引き出し、心身全体のバランスを整えることを重視します。
また、病気だけに着目するのではなく、「未病(みびょう)」という考え方を大切にし、不調が現れる前から健康を維持することも重視しています。そのため、体質や生活習慣を含めて総合的に心身の状態を捉えることが特徴です。
中医学
中医学は、中国で体系化・発展した伝統医学です。陰陽説や五行説を理論の基礎とし、病気だけでなく体質や生活環境も踏まえて診断・治療を行います。
診察では、望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せっしん)と呼ばれる四診(ししん)を用いて、患者さんの状態を総合的に判断します。症状だけではなく、その原因となる体質や体内バランスを重視する点が特徴です。
漢方
漢方は中医学をルーツとしながら、日本の気候や風土、日本人の体質に合わせて独自に発展した日本独自の伝統医学です。現在の日本では医療機関でも漢方薬が処方されており、西洋医学と組み合わせて用いられることも少なくありません。
また、日本では長年の臨床経験をもとに診断方法や処方が整理され、現在では保険適用となっている漢方薬も数多くあります。患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせて処方を考えることが大きな特徴です。
違いの比較
- 東洋医学:アジアの伝統医学全体の総称
- 中医学:中国で体系化された伝統医学
- 漢方:日本で独自に発展した伝統医学
つまり、「東洋医学」という大きな枠組みの中に「中医学」や「漢方」が含まれており、それぞれが地域の文化や風土に合わせて独自に発展してきた伝統医学で
これらに共通する考え方の一つが『心身一如(しんしんいちにょ)』です。
心と体は切り離せない存在であり、どちらか一方の不調がもう一方にも影響するという考え方です。

また、東洋医学では『気(き)』『血(けつ)』『水(すい)』の3つが体内を巡り、バランスを保つことで健康が維持されると考えられています。
これを『気血水(きけつい)』と呼び、このバランスが崩れることでさまざまな不調が現れると考えます。
さらに東洋医学は、『未病(みびょう)』への対応を重視することも特徴です。
未病とは?
検査では異常が見つからないものの、体調の変化や不調を自覚している状態を指します。
症状が軽いうちから体質を整え、病気を未然に防ぐという考え方は、東洋医学の大きな特徴の一つです。
そのため東洋医学では、尿管結石という病名だけを見るのではなく、体質、生活習慣、冷えや熱感、水分代謝、胃腸の状態などを総合的に判断します。そして、一人ひとりの体質に合わせて漢方薬や養生法を選択していきます。
次の章では、尿管結石が起こりやすい体質として考えられている『湿熱(しつねつ)』や『腎(じん)』について詳しくご紹介します。
東洋医学からみる尿管結石の原因と考え方

東洋医学では、尿管結石や腎結石は『石淋(せきりん)』と呼ばれます。
西洋医学では結石の大きさや位置、成分などをもとに診断・治療を行いますが、東洋医学では「なぜ結石ができやすい体質になったのか」という背景を重視します。
その中でも重要な考え方が『湿熱(しつねつ)』です。湿熱が下焦(へそより下の下腹部)へ停滞することで、尿管結石が生じやすい体内環境になると考えられています。
※下焦については「三焦(さんしょう)と下焦(げしょう)とは?」で詳しく解説します。
尿管結石の原因とされる湿熱(しつねつ)とは?
湿熱とは、体内に余分な水分(湿)と熱(熱)が停滞した状態を指す東洋医学の概念です。
・湿:余分な水分や老廃物が停滞した状態
・熱:炎症傾向、熱感、代謝バランスの乱れなど
東洋医学では、この湿熱が長期間停滞すると尿の流れや水分代謝が乱れ、結石が形成されやすい体内環境になると考えられています。
湿熱がある方には、べたつく汗、体の重だるさ、むくみ、口の中のべたつき、にきび・吹き出物、湿疹の悪化、イライラなどがみられることがあります。
湿熱が溜まりやすい要因とは?
湿熱は、胃腸の働きが低下して余分な水分(湿)が体内へ蓄積し、その状態でストレスや疲労、脂っこい食事、味の濃い食事、アルコールなどによる熱が加わることで生じると考えられています。
【代表的な要因】

- アルコール
- 脂っこい食事
- 味の濃い食事
- 肉類中心の食生活
- 甘いものの摂り過ぎ
- 水分不足
- ストレス
- 運動不足
- 冷たい飲食物の摂り過ぎ
- 暴飲暴食
湿熱と結石の関係性
東洋医学では、湿熱が腎や膀胱へ停滞すると水分代謝や尿の流れが乱れ、不要物が体内へ停滞しやすくなることで、結石が形成されやすくなると考えられています。
そのため、湿熱を取り除くだけではなく、水分代謝を支える『腎』の働きにも着目し、体質そのものを整えることが重要とされています。
※腎については「五臓(ごぞう)と腎(じん)」の章で詳しく解説します。
尿管結石は食生活と生活養生が大切
東洋医学では、湿熱をため込みにくい生活習慣を続けることが再発予防につながると考えます。
- こまめな水分補給
- 野菜を積極的に取り入れる
- アルコールを控えめにする
- 脂っこい料理を続けない
- 濃い味付けを控える
- 肉類に偏らない食事
- 適度な運動
尿管結石は再発率が高い疾患です。症状が改善した後も、体質改善を意識した食生活や生活養生を継続することが、東洋医学では重要と考えられています。
次の章では、『三焦』や『下焦』の役割について詳しくご紹介します。
東洋医学における五臓とは?尿管結石との関係を解説

東洋医学では、人の健康は臓器だけで成り立つものではなく、それぞれの働きが互いに影響し合いながら全身のバランスを保っていると考えます。その中心となる考え方が「五臓(ごぞう)」です。
五臓とは、西洋医学における臓器そのものを指すものではありません。「肝・心・脾・肺・腎」の5つの働きに分類し、生命活動全体を捉える東洋医学独自の概念です。
五臓は、生命活動を支える「気・血・水」を生成・貯蔵・循環させる役割を担うと考えられています。
前章でご紹介したように、「気」は生命エネルギー、「血」は全身へ栄養とうるおいを届ける働き、「水」は血液以外の体液を指し、それぞれがバランス良く巡ることで健康が維持されると考えられています。
五臓の主な働き

- 肝(かん)
気の巡りを整え、感情や自律神経の働きを支えるほか、血を蓄え血液量を調節すると考えられています。 - 心(しん)
血を全身へ巡らせる働きに加え、精神活動や意識を司ると考えられています。 - 脾(ひ)
西洋医学の脾臓とは少し意味が異なり、主に胃腸の消化吸収機能を指します。飲食物を栄養やエネルギーへ変え、全身へ届ける重要な役割を担います。 - 肺(はい)
呼吸によって新しい気を取り込み、気や水を全身へ巡らせる働きを担うと考えられています。 - 腎(じん)
生命エネルギーを蓄え、成長・発育・生殖・加齢に深く関わるとともに、水分代謝や泌尿器系の働きを支える重要な存在と考えられています。
尿管結石との関係では、この五臓の中でも特に「腎」が重要視されます。
東洋医学では、腎の働きが低下すると水分代謝が乱れ、湿熱が停滞しやすい体質につながると考えます。
次の章では、尿管結石との関わりが深い「腎(じん)」について、東洋医学ではどのように考えられているのかを詳しくご紹介します。
五臓において腎の役割
東洋医学では、五臓の中でも「腎」は生命活動の基盤となる重要な働きを担うと考えられています。
泌尿器だけではなく、成長・発育・老化、水分代謝など幅広い働きと関わる点が特徴です。

- 精(せい)の貯蔵
「精」は成長・発育・生殖など生命活動の源となるエネルギーです。生まれ持った「先天の精」と、飲食物から補われる「後天の精」を蓄えると考えられています。 - 水分代謝の調整
体内の水分バランスを保ち、不要な水分を尿として排出する働きを担います。また、肺や脾と連携しながら全身の水分循環を支えると考えられています。 - 成長・発育・老化の調整
精の働きにより、成長や生殖機能だけでなく、加齢による白髪、脱毛、歯や足腰の衰えなどとも深く関係すると考えられています。 - 呼吸の補助
肺が取り込んだ気を体内へ深く巡らせ、安定した呼吸を支える働きがあると考えられています。
なぜ腎は弱くなる?
東洋医学では、腎の働きが低下した状態を**「腎虚(じんきょ)」**と呼びます。
腎は、成長や発育、加齢、水分代謝など、生命活動の基盤となる働きを担うと考えられています。
そのため、年齢を重ねることだけでなく、過労や睡眠不足、冷え、食生活の乱れなどが続くことによっても、腎の働きが低下しやすくなるとされています。

腎虚につながる主な要因には、以下のようなものがあります。
- 加齢
- 体の冷え
- 過労や慢性的な疲労
- 睡眠不足
- ストレス
- 暴飲暴食
- 食生活の乱れ
- 水分不足
- 脂っこい食事
- アルコールの摂り過ぎ
- 不規則な生活習慣
これらの要因が重なると、腎が担う水分代謝の働きが十分に発揮されにくくなり、体内に余分な水分が停滞しやすくなると考えられています。
次の項目では、腎の働きが弱くなることで、なぜ体内に「湿」がたまりやすくなるのかを詳しくご紹介します。
腎が弱くなるとなぜ湿が溜まるのか?

東洋医学では、腎には体内の水分代謝を調整する働きがあると考えられています。
そのため、腎の働きが低下すると、水分を十分に巡らせたり排出したりする力が弱まり、体内に余分な水分が停滞しやすくなります。この停滞した余分な水分が「湿(しつ)」です。
さらに、湿が長期間停滞した状態で、脂っこい食事やアルコールの摂り過ぎ、ストレスなどによる「熱」が加わると、「湿熱(しつねつ)」へ変化すると考えられています。
東洋医学では、この湿熱が腎や膀胱周辺へ停滞すると、水分代謝や尿の流れが乱れ、尿管結石や排尿トラブルにつながりやすくなると考えられています。
湿熱によって現れやすい代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 頻尿
- 尿の色が濃い
- 残尿感
- 排尿時の痛みや違和感
- 尿が出にくい
- 尿が少量ずつしか出ない
- 血尿がみられることがある
- 尿のにおいが強くなる
- 下腹部の張りや重だるさ
- 腰や脇腹の重だるい痛み
また、湿熱が長期間停滞すると、尿中の不要物が排出されにくくなり、尿管結石が形成されやすい体内環境につながると考えられています。
次の章では、尿管結石と深く関わる「三焦(さんしょう)」と「下焦(げしょう)」の働きについて詳しくご紹介します。
三焦(さんしょう)と下焦(げしょう)とは?尿管結石との関係を解説
東洋医学では、尿管結石は体内の水分代謝や『気・血・水』の巡りが乱れた結果として捉えられます。
その考え方を理解するうえで重要となるのが『三焦』と『下焦』です。
三焦は西洋医学の特定の臓器ではなく、水分代謝や気の巡りを調整する働きを表す東洋医学独自の概念です。なかでも下焦は排尿や排泄と深く関わる領域とされ、尿管結石との関係が深いと考えられています。
上焦(じょうしょう)・中焦(ちゅうしょう)・下焦(げしょう)

三焦は上焦・中焦・下焦の3つの領域に分けられ、それぞれが異なる役割を担うと考えられています。
| 分類 | 主な部位 | 主な役割 |
| 上焦 | 胸部(心・肺など) | 呼吸・気や水分の巡り |
| 中焦 | 胃・脾 | 消化・吸収 |
| 下焦 | 腎・膀胱・腸・生殖器 | 排尿・排泄・水分代謝 |
※三焦は東洋医学の概念であり、西洋医学の解剖学上の臓器と一対一に対応するものではありません。
なぜ結石で下焦が重要なのか?
東洋医学では、尿管結石は『湿熱』が下焦に停滞し、尿の流れや水分代謝が乱れた状態と関連付けて考えられています。
下焦は腎や膀胱と関係する領域であり、水分代謝や排尿を担う重要な役割を持つと考えられています。下焦の働きが十分に発揮されないと、水分を円滑に排出できなくなり、尿が濃縮しやすい状態になると考えられています。
そのため、下焦に停滞した湿熱を改善し、水分代謝や排尿機能を整えることが重要とされています。
漢方薬は体質や症状を総合的に判断して選択されます。
湿熱に対して用いられる代表的な生薬には『車前子(しゃぜんし)』と『滑石(かっせき)』があります。

- 車前子(しゃぜんし)
オオバコの種子を乾燥させた生薬で、利水作用(余分な水分を排出する働き)や清熱作用(熱を冷ます働き)を持ち、余分な水分の排出を促します。 - 滑石(かっせき)
鉱物由来の生薬で、利水作用(余分な水分を排出する働き)や清熱作用(熱を冷ます働き)により下焦の湿熱改善を目的として用いられます。
これらの生薬は、下焦にこもった湿熱の改善を図り、水分代謝や尿の流れを整える目的で用いられます。
また、車前子や滑石が配合されている漢方薬には、「猪苓湯(ちょれいとう)」や「五淋散(ごりんさん)」などがあります。
これらは、排尿時の違和感や頻尿、残尿感、血尿など、湿熱による症状の改善を目的として用いられることがあります。
漢方薬は、結石の種類や症状、体質によって適した処方が異なるため、自己判断ではなく、漢方に詳しい医師や薬剤師へ相談したうえで選ぶことが大切です。
次の章では、尿管結石に用いられる代表的な漢方薬と、それぞれの特徴について詳しく解説します。
漢方で重視する利水(りすい)とは?尿管結石との関係を解説
東洋医学では、尿管結石や腎結石への対応を考えるうえで、体内の水分バランスを整える「利水(りすい)」という考え方が重視されています。体内に余分な水分が停滞すると、尿の流れや水分代謝が乱れ、むくみや排尿トラブルなど、さまざまな不調につながると考えられています。
ここでは、東洋医学における利水の考え方をはじめ、尿管結石や湿熱との関係について詳しく解説します。
利水とは?
漢方における利水とは、体内に停滞した余分な水分の排出を促し、水分の偏りや巡りを整える働きを指します。
東洋医学では、体内の水分は「気・血・水」のうちの「水」として全身を巡り、体を潤したり、不要なものを排出したりする役割を担うと考えられています。
しかし、水分代謝が乱れると、「水」が必要な場所へ十分に行き渡らなくなったり、特定の場所に余分な水分が停滞したりすることがあります。この状態は「水滞(すいたい)」や「水毒(すいどく)」と呼ばれ、さまざまな不調の原因になると考えられています。
『利水』には、こうした水分の停滞や偏りを整え、体外への排出を促す役割があります。
水分代謝の乱れによって現れやすい症状には、以下のようなものがあります。

- むくみ
- めまい・立ちくらみ
- 頭痛
- 胃腸の不調
- 体が重くだるい
- 尿が出にくい
- 尿量が少ない
これらの症状や体質に応じて、利水作用を持つ生薬や漢方薬が用いられます。
なぜ結石で利水が重要なのか?

利水によるアプローチは、尿量を増やして尿を薄めることで、結石の原因となる成分が結晶化しにくい環境を整え、さらに尿の流れを改善して結石が自然に排出されやすくするため重要とされています。
また、結石ができやすい湿熱体質の方は、水分代謝が乱れ、尿が濃縮されやすくなることで、結晶ができやすい環境になると考えられています。
そのため、余分な水分や老廃物を尿とともに体外へ排出し、水分代謝を整える「利水」は、尿管結石の改善を目指すうえで重要な考え方の一つです。
利水と湿熱の関係

東洋医学では、尿管結石には「湿熱」が深く関係していると考えられています。
そのため、利水によって余分な水分を排出するだけでなく、体内にこもった熱を冷ます「清熱(せいねつ)」を組み合わせて湿熱を改善させます。
この考え方を「清熱利湿(せいねつりしつ)」と呼び、体内に停滞した湿熱を改善しながら、水分代謝を整える東洋医学の代表的な治療法の一つになります。
また、湿熱の影響によって腎や膀胱の働きが低下していると考えられる場合には、利水作用や清熱作用を持つ生薬や漢方薬を組み合わせ、一人ひとりの体質や症状に合わせて処方が検討されます。
次の章では、尿管結石に用いられる代表的な生薬や漢方薬について詳しくご紹介します。
尿管結石に用いられる生薬・漢方薬

尿管結石の漢方相談では、「五淋散(ごりんさん)」や「猪苓湯(ちょれいとう)」などの漢方薬が用いられることがあります。
これらの漢方薬は、尿管結石そのものを直接溶かすことを目的としたものではなく、排尿痛や頻尿、残尿感などの尿路症状の改善を図りながら、東洋医学で考える「湿熱(しつねつ)」や「水分代謝の乱れ」を整える目的で用いられます。
また、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて構成されており、それぞれが異なる役割を担っています。
ここからは、代表的な生薬と漢方薬について詳しく解説します。
尿管結石の漢方相談で用いられる代表的な生薬
尿管結石に用いられる漢方薬は、一種類の生薬だけで構成されているわけではありません。
体内に停滞した余分な水分の排出を促す「利水」、体にこもった熱を冷ます「清熱」、血流を整える働きなど、それぞれ異なる役割を持つ生薬を組み合わせ、患者さん一人ひとりの体質や症状に合わせて処方されます。
ここでは、尿管結石の漢方相談でよく用いられる代表的な生薬をご紹介します。
水分代謝や尿の流れを整える生薬

- 茯苓(ぶくりょう):余分な水分の排出を助け、水分代謝を整える目的で用いられます。
- 沢瀉(たくしゃ):余分な水分を尿として排出し、水分の偏りを整える目的で用いられます。
- 木通(もくつう):利水作用により尿の流れを整える目的で用いられます。
- 滑石(かっせき):利水作用と清熱作用を持ち、湿熱の改善を図ります。
- 車前子(しゃぜんし):尿の出にくさや排尿時の熱感に配慮して用いられます。
- 猪苓(ちょれい):猪苓湯の中心となる代表的な利水生薬です。
湿熱を整える代表的な生薬

- 黄芩(おうごん):体にこもった熱を冷ます目的で用いられます。
- 山梔子(さんしし):湿熱による泌尿器症状に配慮して配合されます。
「血」の巡りや体の状態に配慮する生薬

- 芍薬(しゃくやく):筋肉の緊張や痛みに配慮します。
- 当帰(とうき):「血」の巡りを整える目的で用いられます。
- 地黄(じおう):体の潤いを保つ目的で用いられます。
- 阿膠(あきょう):血尿などの出血や潤いに配慮します。
漢方全体を調和させる生薬

- 甘草(かんぞう):処方全体の働きを調和させる代表的な生薬です。
他の生薬の作用を助けたり、刺激を和らげたりする役割があり、多くの漢方薬に配合されています。ただし、重複服用では偽アルドステロン症や低カリウム血症に注意が必要です。
金銭草(きんせんそう)・連銭草(れんせんそう)が補助的に用いられることも
尿管結石や腎結石の漢方相談では、五淋散(ごりんさん)や猪苓湯(ちょれいとう)などの漢方薬がよく用いられます。
一方で、患者様の体質や症状によっては、金銭草(きんせんそう)や連銭草(れんせんそう)といった生薬を組み合わせる場合もあります。
東洋医学では、これらの生薬は水分代謝や尿の流れを整え、結石の自然な排出をサポートする目的で用いられています。
ただし、金銭草や連銭草は、一般的な医療用漢方エキス製剤には含まれていません。そのため、自己判断で使用するのではなく、体質や症状に合わせて漢方に詳しい専門家へ相談することが大切です。
五淋散と猪苓湯の違い
五淋散と猪苓湯は、どちらも尿管結石の漢方相談で用いられる代表的な漢方薬ですが、適した体質や症状には違いがあります。
ここでは、それぞれの特徴を比較しながらご紹介します。
| 比較ポイント | 五淋散 | 猪苓湯 |
| 主に検討される症状 | 排尿痛・熱感・尿のにごり・頻尿・残尿感 | 排尿痛・頻尿・残尿感・血尿・口渇・むくみ |
| 東洋医学の考え方 | 下焦(げしょう)の湿熱を整える | 水分代謝を整え潤いにも配慮 |
| どのような場合に検討されるか | 熱感や尿のにごりを伴う場合 | 口渇や血尿、水分代謝の乱れを伴う場合 |
五淋散(ごりんさん)
五淋散は排尿痛や熱感、頻尿、残尿感、尿のにごりなどに用いられる漢方薬です。
利水作用を持つ生薬と清熱作用を持つ生薬を組み合わせ、下焦に停滞した湿熱を整える構成です。結石の大きさや尿路閉塞(にょうろへいそく)の有無によっては泌尿器科での治療が優先されます。また、甘草と山梔子を含むため長期連用や重複服用には注意が必要です。
猪苓湯(ちょれいとう)
猪苓湯は排尿痛、頻尿、残尿感、むくみなどに用いられる漢方薬です。猪苓・茯苓・沢瀉・滑石が水分代謝を整え、阿膠が体の潤いにも配慮します。
結石を直接溶かす目的ではなく、泌尿器科での治療や経過観察と併用しながら体質に応じて検討します。
漢方薬の効果を確認するまでの期間
変化が現れる時期には個人差があります。排尿痛や尿量、血尿などの変化を確認しながら処方が体質に合っているか判断します。
改善しない場合や悪化する場合は漫然と服用を続けず、泌尿器科で再評価を受けることが重要です。
漢方相談より先に医療機関を受診すべき症状
- 発熱や悪寒を伴う
- 腰や脇腹の強い痛みが続く
- 吐き気や嘔吐が強く水分が取れない
- 尿がほとんど出ない
- 血尿が続く、または急に悪化した
尿管結石では、漢方による体質改善と泌尿器科での画像検査・疼痛管理・排石治療を適切に組み合わせることが大切です。
東洋医学(中医学/漢方)では体質に合わせて漢方を考える
西洋医学では病気や原因に着目して治療を行いますが、東洋医学では病名だけで判断せず、一人ひとりの体質や心身のバランスを総合的に確認しながら漢方薬を選びます。
そのため、以下のような内容を総合的に確認し、その方に合った漢方薬を検討します。

- 体格や冷え・熱感
- 食生活や生活習慣
- ストレスや疲労の状態
- 睡眠や便通など全身の状態
- 同じ尿管結石でも体質(証)に応じて処方を選択する
また、東洋医学では「四診(ししん)」と呼ばれる4つの診察方法を用いて体の状態を確認します。
- 望診(ぼうしん):表情や顔色、肌の状態、姿勢などを観察する
- 聞診(ぶんしん):声や呼吸、咳などの音や体臭などを確認する
- 問診(もんしん):症状や生活習慣、体調の変化などを詳しく聞き取る
- 切診(せっしん):脈やお腹の状態など、体に触れて確認する
四診によって得られた情報を総合的に判断した体質や状態を「証(しょう)」と呼びます。
東洋医学では、この「証」をもとに漢方薬を選択するため、同じ尿管結石であっても、一人ひとり異なる漢方薬が用いられることもあります。
こんな症状がある場合は早めに医療機関へ相談を
漢方薬は、尿管結石による排尿痛や体質改善をサポートする選択肢の一つです。しかし、結石の大きさや位置、感染の有無によっては、漢方薬だけで対応することはできません。
次のような症状がある場合は、自己判断で様子を見ず、早めに泌尿器科や救急医療機関を受診してください。
発熱や悪寒がある

発熱や悪寒、震えを伴う場合は、結石によって尿の流れが妨げられた状態で、細菌感染による腎盂腎炎(じんうじんえん)を起こしている可能性があります。
重症化すると敗血症につながることもあるため、速やかな受診が必要です。
特に高熱や強い倦怠感を伴う場合は症状が急速に悪化することもあるため、できるだけ早く医療機関を受診してください。
我慢できないほどの強い痛みが続く

強い痛みが続く場合は、医師による診察と適切な痛みのコントロールが必要です。
耐えられないほどの痛みがある場合は、救急外来の受診も検討してください。
痛みが強い状態では日常生活にも大きな支障をきたすため、無理に我慢せず、適切な治療を受けることが大切です。
血尿や尿が出にくい

血尿が続く場合や、尿が極端に少ない、ほとんど出ない場合は、尿路が強く閉塞している可能性があります。
放置すると「水腎症(すいじんしょう)」や腎機能の低下につながることがあるため、早めに受診してください。
特に尿がほとんど出ない状態は緊急性が高い場合もあるため、様子を見続けず、速やかに医療機関へ相談することが重要です。
吐き気や嘔吐が続く

強い痛みに伴って吐き気や嘔吐が続くと、水分が十分に摂れず、脱水状態になることがあります。
脱水は結石の悪化や再発につながる可能性もあるため、症状が続く場合は医療機関で適切な治療を受けることが大切です。
また、水分補給ができない状態が続くと全身の状態も悪化しやすくなるため、早めに受診して点滴などの処置が必要になることもあります。
漢方相談と病院受診を併用することが大切

尿管結石では、急性期の強い痛みや感染への対応は、西洋医学による治療が優先されます。一方で、漢方では体質や水分代謝、生活習慣などを総合的に確認し、排尿症状の改善や再発予防を目的としてサポートを行います。
漢方薬は結石を直接取り除く治療ではありませんが、体質に合わせて取り入れることで、排尿の状態を整えたり、再発しにくい体づくりを目指したりすることが期待できます。
急性期の治療は医療機関で適切に受け、その後の体質改善や再発予防は漢方相談を活用するなど、それぞれの強みを生かして取り組むことが大切です。
まとめ

尿管結石(にょうかんけっせき)は、腎臓でできた結石が尿管に移動し、激しい痛みや血尿などを引き起こす病気です。一度治っても再発しやすいため、日頃から生活習慣や水分摂取を見直し、再発予防に取り組むことも大切です。
東洋医学では、尿管結石を「石淋(せきりん)」と捉え、湿熱(しつねつ)や水分代謝の乱れ、腎(じん)の働きなど、体全体のバランスを考えながら漢方薬を選択します。また、病名だけではなく、一人ひとりの体質や症状に合わせた「証(しょう)」を重視して処方を検討することも漢方の大きな特徴です。
一方で、尿管結石は強い痛みや感染を伴うこともあるため、漢方薬だけで対応できる病気ではありません。発熱や激しい痛み、血尿、尿が出にくいなどの症状がある場合は、速やかに泌尿器科を受診することが大切です。
急性期は医療機関で適切な治療を受け、体質改善や再発予防には漢方を取り入れるなど、それぞれの強みを生かしながら取り組むことが、尿管結石と上手に付き合うためのポイントです。気になる症状がある場合は、一人で悩まず、泌尿器科や漢方に詳しい薬剤師・医師へ相談してください。
尿管結石では、西洋医学による治療と漢方による体質改善や再発予防を適切に組み合わせることが大切です。

