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【症状】憂うつな状態が長く続く
うつ病とは、感情障害(気分障害)の一種です。近年は増加傾向にあり、わが国では20歳以上の人の約7.5%( およそ13人に1人)が、一度はうつ病を経験したことがある、と報告されています(平成14年度・厚生労働省の調査より)。世界的に見ても、人口の3~5%の人がうつ病だと言われています。しかし実際に治療を受けているのは全患者のうちの25%程度という報告があります。
物事に対する関心や取り組む意欲がなくなり、何もする気が起こらない状態が一日中ずっと、ほとんど毎日、2週間以上にわたって続くと、心療内科などでは「うつ状態」と診断されます。この「うつ状態」が持続し、日常生活に支障を来してしまう病気が「うつ病」です。日常生活でよくある、一時的で、日常生活に支障を来さない程度の、短期間の気分の落ち込みはうつ病ではありません。
うつ病の主な症状
精神面の症状例
- 気が沈む、気が重い、考え方が虚無的になる
- 今まで好きだったことや、テレビや音楽などが楽しめなくなる
- 仕事の能率が上がらない
- 人との会話・議論に集中できない
- 注意力が散漫になり、事故やケガをしやすい
からだの変化(身体症状)
- 睡眠障害…夜はぐっすり眠れず、朝早く目覚めてしまう
- 疲れやすさ、倦怠感
- 首すじや肩のこり
- 頭痛、頭重感
- 息苦しさ、胸苦しさ
- 食欲や性欲の低下
【原因】性格、環境の変化、脳内物質が原因に
うつ病の原因は、はっきりとはわかっていません。生まれつきの素因と考える人もいますが、病気そのものは遺伝性ではありません。もともとの性格や考え方の傾向、環境(ストレスなど)に加え、体質・脳内にある物質の変化も関係していると考えられています。
性格・考え方
うつ病の発症には、もともとの性格や考え方の傾向、あるいは環境(ストレスの状態)なども深く関わっていると言われています。生真面目で責任感が強い人、完全主義者、社交的で活発だけれどさみしがり屋でもある人などは、うつ病になりやすいようです。
環境
仕事での疲労や、職場での異動、さまざまな出来事による精神的な打撃、近親者やかわいがっていたペットの死、家庭内の葛藤などがきっかけで、うつ状態になります。女性の場合、妊娠・出産・月経が原因になることがあります。
体質・脳内物質
「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった感情をコントロールしている物質(神経伝達物質)は、ストレスや、心身の疲労などが続くと異常が生じやすくなります。その結果、感情をうまくコントロールできなくなり、うつ状態に陥ります。
【考え方】「肝」の不調による気の滞りが原因
うつ病も、神経症や不眠症と同じように「肝」の乱れが原因と考えます。詳細は「神経症・不安神経症・パニック障害」および「不眠症・睡眠障害」の[考え方]の欄をご参照ください。
【処方例】気を整え、元気を出す処方
処方も基本的には神経症や不眠症と同様なのですが、うつ病の場合は「元気を出す」という要素をここに加えます。気が不足し、体全体の活力が低下する「気虚」(ききょ)が著しい場合に使う「補気薬」(ほきやく)を併用すると効果が出ます。
具体的には、肝気を良く巡らせるための「疎肝理気薬」(そかんりきやく…柴胡〈さいこ〉、芍薬〈しゃくやく〉など)に、気を補うための「補気薬」(人参など)、精神を安定させる「安神薬」(あんしんやく…竜骨〈りゅうこつ〉、牡蠣〈ぼれい〉、酸棗仁〈さんそうにん〉、遠志〈おんじ〉など)といった漢方薬を組み合わせてつくります。